「最悪ー、クーラー切ってあるー」
隣の部屋からやってきたハルのこんな声で目が覚めた。
「最悪とは失礼な!」
隣のベットを見ると、アキが大の字になってグーグー寝ている。
部屋の中は、冷気が程よく残って快適な状態なのである。
暑い暑いとハルがうるさいので、彼女たちの部屋へ行ってみた。
凍える!!!
ここは冷凍庫か!?!!???
こんな温度で寝られるなんて、信じがたい奴らである。
電気の無駄~!とナツは心の中で叫んでみた。
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朝食は食べ放題のビュッフェスタイルかと思いながらレストランへ向かうが、それらしきコーナーがない。
しかし、テーブルに座っている宿泊客は、全員おいしそうに食べている。
まさか、時すでに遅し?朝食の時間は終ったのか?!
いやいや、そんなはずはない。まだ朝の8時半である。
いくらなんでも8時半に朝食の時間が終わるホテルなんて・・・
あってほしくない・・・
不安な顔をしながら入っていくと、ウエイトレスさんが
「おはようございます。お好きなお席へどうぞ~~」
と笑顔であいさつをしてくれた。
よかった、とりあえず何か食べることが出来るようだ。
ウエイトレスさんはメニューを持ってやってきた。
メニューをみると、ずらりと朝の献立が並んでいる。
どれもこれもおいしそうだ。しかし値段が書いていない。
値段の書いていないメニュー。
恐ろしい・・・
いったいいくら請求されるんだろう・・・
恐る恐るたずねてみた。
「このメニューから注文するのですか?」
(考えてみたら馬鹿らしい質問ではあるが・・・)
「はい、お好きなだけ御注文ください。」
はぁ・・・好きなだけねえ。。。
気分はどんどん暗くなる。雨でも降りそうだ。
しかし次の一言で一気に快晴となった。
「無料ですから。」
む・りょ・う
パーっと花でも撒き散らしたい気分である。
そうよね、そうよ。このホテルは朝食付きなのよ。
ナツも夫もすっかりそのことを忘れていた。
「さぁ!なんでも好きなものを注文しちゃおう!」
俄然元気になった親をみて、ハルもアキも引いていた。
「え、何でも頼んでいいの?紅茶でもいいの?ホットケーキでもいいの?」
「いいよー。何でも好きなものを言ってよー。」
何でも好きなものを頼んでいい、なんてセリフが親の口から出るなんて奇跡と思ったに違いない。二人ドは、かなり控えめに紅茶とトーストとジースを注文した。
ハルは、横で母親がクロワッサンやベーコン・エッグ、ワッフルにフルーツ盛り合わせ、と次々と注文しているのを見て「信じられない」という顔をしていた。
朝食が運ばれてくるのをのんびりと海を眺めながら待つ間、今日一日の予定を話し合った。
10時と2時の2回、キッズプログラムというのがあるらしい。それは、ホテルの担当者が子供だけを集めて色々なアクティビティーをしてくれる、というプログラムであった。今日の予定は、10時からはカヤック。2時からは島探検だった。
「カヤックいいんじゃない?」
「やだぁ・・・」
「行こうよ、カヤック!楽しいと思うよぉ~~~」
「やだぁ・・・」
なんとしてでも子供達だけで参加してもらいたいナツであった。